小細胞肺がんの化学療法 肺がんの治療法

プロフィール

中澤 健介

筑波大学 医学医療系 呼吸器内科 講師

小細胞肺がんの化学療法とは?

肺がんは大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2つに分けることができます。

肺がん自体、タバコがリスクの一つとなりますが、特に小細胞肺がんはタバコとの関連が強いとされます。
一般的に小細胞肺がんは進行が早く、転移もしやすいと言われています。そのため、小細胞肺がんの診断がつくときには進行していることが多く、治療として手術適応になる方は少なく、化学療法が治療の中心となることが多くなります。

ただ、抗がん剤や放射線治療の効果は非小細胞肺がんより高いことも知られています。

小細胞肺がんの化学療法の適応について

肺がんは小細胞肺がん、非小細胞肺がんともに、そのがんの大きさや広がり方で病期、ステージというものが決められています。ステージはⅠ~Ⅳまでに分類されており、数字が進む毎に病気も進行している状況を表します。

小細胞肺がん ステージⅠ
ステージⅠだと手術ができる方は手術を行い、その後に化学療法を行うということが勧められています。手術が難しい方は化学療法または放射線療法、もしくは両方を併用する化学放射線療法が選択肢となります。

小細胞肺がん ステージⅡ~Ⅳ
ステージⅡ以降では、手術適応はなくなり、化学療法、つまり抗がん剤での治療が中心となります。がん全体に放射線がかけられる方は化学療法と併用する、化学放射線療法が勧められます。ステージⅣでは化学療法となります。

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限局型と進展型とは?

小細胞肺がんにはステージとは別にこれは治療方法を考えるときに 「limited disease LD、限局型」と「extensive disease ED、進展型」という2つに分けることもあります。

定まった定義はありませんが、一般的には限局型とはがんが左右どちらかの胸郭内(胸のなか)と反対側の縦隔や鎖骨上窩リンパ節までに限られており、がんによる胸水や心嚢水がないこととされます。それ以上に進行している場合を進展型といいます。
限局型の場合には化学放射線療法を検討し、進展型には化学療法を検討することになります。

PSや治療適応を決める因子について

実際に治療を決めるのはステージなどのがんの広がり具合だけではありません。
日常生活がどの程度おこなえるのか、その人それぞれの活動度も重要になります。これはPerformance status略してPSと言われ、0~4までに分類されます。

PS0は健常な方と同じように無症状で社会活動が行われる状況ですが、数字がすすむごとに活動性が低下することになります。
PS4になると、自分だけでは身の回りのこともできず、常に介助が必要で、一日中寝ている状態になります。

PSが低下している方の場合には、治療のための化学療法が、逆に体に負担をかけすぎてしまい、余計体調を悪化させる恐れがあるため,化学療法が行えないこともあります。

そのほかに、年齢や腎臓や肝臓などの各臓器の具合、糖尿病や認知症、心不全などといった合併症の有無なども含めて、総合的に判断し、患者さんそれぞれにどの治療がよいかを判断していきます。
また、病気の進行具合やPSに関わらず、すべての患者さんへ必要に応じて緩和療法を行っていきます。

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小細胞肺がんの化学療法

化学療法は、一般的にプラチナ製剤と言われる抗がん剤ともう1種類の抗がん剤を用いる2剤併用が行われます。

年齢やPS、合併症の具合により、抗がん剤の選択を行います。
使用する抗がん剤により、投与方法など異なりますが、大まかに共通した点をお話ししたいと思います。

治療期間ですが、1回の治療は通常3~4週間となっています。それを4回くり返すことが一般的になります。
そのため、一通りの治療は3~4ヶ月かかるということになります。
しかし、この間、ずっと点滴をしているわけではありません。
抗がん剤が点滴からはいるのは、抗がん剤によって異なりますが、初日、8日目、15日目、初日から3日間のみなどがあります。

では、1回の治療になぜ3~4週間もかかるかというと、抗がん剤の投与によって副作用が出現し、また体が回復するのにその程度の期間が必要となるためです。体調がもどったところで2回目、3回目と治療をくり返していきます。

抗がん剤の種類によっては、入院での治療ではなく、外来化学療法といって外来通院での点滴治療が可能な場合もあります。

また、2剤併用ができない場合には、単剤の化学療法も検討されます。

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抗がん剤の副作用について

まず抗がん剤の点滴をしてから1週間程度の間で、悪心嘔吐、食欲低下といった症状が現れることがあります。抗がん剤の点滴の際には吐き気止めも一緒に点滴をしたり、内服したりします。現在では吐き気止めも進歩しており、嘔吐が止まらないといった状況は少なく、ムカムカする、食欲がないといった状況のほうが多くみられます。この症状は1週間をすぎると徐々におちついてきます。

2週間目くらいで骨髄抑制といわれる副作用が出現します。骨髄抑制とは、抗がん剤によって血液をつくる場である骨髄が影響をうけて、一時的に血液をつくりにくくなり、結果として血球が少なくなることを言います。
この血球減少には白血球の減少、赤血球の減少、血小板の減少の3つがおこります。これには特に自覚症状がありません。採血を定期的行い、減少しているか確認していくことになります。白血球が少なくなると体の免疫力が低下し、感染に弱くなります。そのため、白血球が減ったときは、その程度に応じて、白血球を増やす注射などを用いたり、感染をおこした際には、抗生剤の投与などで対応します。赤血球が減った時には、貧血になるのでめまい、息切れ、たちくらみなどを感じる時があります。これも採血で貧血がひどいときには輸血をして対応します。
血小板が減った時には、出血しやすく、止まりにくい状況になります。そのため、減りすぎたときには、輸血することになります。

そのほか、抗がん剤の種類によっては、脱毛がおこります。2.3週間目に髪の毛などが抜けてくることが多いですが、抗がん剤治療が終われば、また生えてきます。
そのほか、だるさや口内炎、下痢などといった症状や腎臓や肝臓機能障害がでたりすることがあります。

日常生活での注意点は、手洗い、うがいなど、感染に注意することや、特に白血球が減っている時期には人混みに出かけたりなど無理をせずに過ごすことが必要です。また上記のような副作用の出現があることを知っておき、医師や看護師など医療スタッフとよく相談しながら、治療に取り組んでいただけるとよいと思います。