膵腫瘍の中には性質、ふるまいの全く異なる3種類の腫瘍が含まれます。我々はそのいずれかによって、対応が異なり、お勧めする治療法も全く異なります。今回、膵臓がんの性質や治療法についてお伝えさせていただきますが、まず最初に、がんは一人ひとり違うという事をしっかりとご理解いただきたいと思います。
手術の方法は腫瘍が膵臓がんであるのか、それ以外の腫瘍なのかで方針が変わってきます。 膵臓がんではない膵腫瘍の場合は、膵腫瘍核出術などのより体の負担が軽い縮小手術を選択します。膵臓がんの場合は、がん細胞を残さずに切除してくることが大前提となります。 腫瘍の出来た部位が膵臓の右側「膵頭部」にできたのか、左側「膵体尾部」にできたのかで手術の方法が変わります。
通常型膵がん、すなわち一般的に言う膵がんは治療が難しい難治がんの代表です。難治がんである理由にはいくつもの要因が重なっています。
抗がん剤は飲み薬や点滴の薬であり、血液の流れに乗って体の至る所にまで運ばれます。そのため全身にがんが広がってしまった場合でも、すみずみまで効果を発揮することが期待されます。しかしながら、手術ががんを根こそぎ取り除く根治治療であることに対して、抗がん剤の治療の効果には限界があり、その目的は病気の進行を抑えて、生活の質を保ちながら寿命を延ばす延命治療が主な目的となります。
放射線治療は、さまざまな臓器から発生したがんに対して適応があり、膵がんに対しても例外ではありません。膵がんに対する放射線治療の主な適応は、切除(手術)不能な局所進行性膵がんに対する化学療法を併用した放射線治療法(化学放射線治療)です。手術が出来ない場合でも化学放射線治療の適応となることがあります。
粘液産生性嚢胞腫瘍とは、膵管の中にできた腫瘍細胞が、粘液を産生することで同部位に粘液を貯めてしまい嚢胞状に膨らんでしまう病気です。
主膵管に病気があるIPMNとMCNは手術すべきと考えています。分枝膵管に病気があるIPMNは経過観察としています。しかしながら、粘液嚢胞内にキノコみたいなポリープが存在する症例や経過観察中に増大傾向示すもの、腹痛・背部痛などの症状を繰り返す方、主膵管が徐々に太くなるものは分枝膵管の病気でも手術をお勧めしています。
膵神経内分泌腫瘍とは膵神経内分泌細胞に由来する腫瘍のことです。膵神経内分泌腫瘍は膵臓だけでなく、胃や腸の消化管、また肺や下垂体、甲状腺など体のいたるところに発症することが知られています。
膵臓の腫瘍が周りに広がりすぎている場合や、取りきれない数や場所に転移してしまった場合は手術以外の治療となります。