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オリンピック・パラリンピックの教育的意義 オリンピック・パラリンピックの理念

プロフィール

真田 久

筑波大学 体育系教授

オリンピック・パラリンピックの理念

1896年、ギリシャ・アテネで第一回が開催された近代オリンピック競技会は、その理念である「オリンピズム」の実現に向けて、一世紀以上の歴史を刻んできました。IOCのオリンピック憲章では、オリンピズムを「肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学」、また「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と定め、その目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」と示しています。
また、1948年の英国・ストークマンデビル病院で開催されたアーチェリー大会にルーツを持つパラリンピックは、1960年のローマ大会を第一回とし、現在では世界最高峰の障がい者スポーツ大会となっています。パラリンピックでは、そのゴールを「パラリンピックムーブメントの推進を通してインクルーシブな社会を創出すること」と示し、すべての人が共生する社会の構築を目指しています。
これらの実現に向けて、オリンピックとパラリンピックはそれぞれ、以下の価値を示しています。

オリンピックの価値

卓越(Excellence)
スポーツに限らず人生においてベストを尽くすこと。大切なのは勝利することではなく、目標に向かって全力で取り組むことであり、体と頭と心の健全な調和をはぐくむことである。

友情(Friendship)
スポーツでの喜びやチームスピリット、対戦相手との交流は人と人とを結び付け、互いの理解を深める。そのことは平和でよりよい世界の構築に寄与する。

敬意/尊重(Respect)
互いに敬意を払い、ルールを尊重することはフェアプレー精神をはぐくむ。これはオリンピック・ムーブメントに参加するすべての人にとっての原則である。

パラリンピックの価値

勇気(Courage)
マイナスな感情に向き合い、乗り越えようと思う精神力

強い意志(Determination)
困難があっても、諦めず限界を突破しようとする力

インスピレーション(Inspiration)
人の心を揺さぶり、駆り立てる力

公平(Equality)
多様性を認め、創意工夫をすれば、誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力

オリンピック・パラリンピック教育

そして、これらの価値をとくに若い世代に広めていく教育活動のことを、オリンピック教育、パラリンピック教育と呼びます。2020年の東京大会では、オリンピックとパラリンピックが同じ組織委員会の下で運営されることから、それらをあわせて「オリンピック・パラリンピック教育」という名称で、全国で様々な教育活動が展開されています。筑波大学オリンピック教育プラットフォームでは、国内外の関連研究・情報を集約し、「研究」と「実践」の両輪でその推進を行っています。